「最近、食べ物が飲み込みにくくなった」「話すときに舌がもつれる」そんなお悩みを抱えていませんか?
実は、これらの症状は加齢による口腔機能の低下が原因かもしれません。しかし、諦める必要はありません。毎日の簡単な口腔体操で、いつまでも若々しい口元を保つことができるのです。
口腔体操は、お金をかけずに自宅で手軽に始められる健康法です。正しい方法を身につければ、飲み込む力の向上、発音の改善、さらには表情筋の活性化による若見え効果まで期待できます。
今回は、医療関係者も推奨する効果的な口腔体操の方法を、初心者の方にもわかりやすく解説します。きっと、あなたの毎日がより豊かになることでしょう。
高齢者に口腔体操が必要な理由

加齢による口腔機能の変化
年齢を重ねると、私たちの口の中では様々な変化が起こります。オーラルフレイルとは、噛んだり、飲み込んだり、話したりするための口腔機能が衰えることを指し、早期の重要な老化のサインとされています。
具体的には、以下のような変化が現れます:
- 唾液の分泌量低下:お口の中が乾燥しやすくなり、食べ物の飲み込みが困難になります
- 舌の筋力低下:食べ物を口の中でまとめる力が弱くなり、飲み込みにくさを感じます
- 咀嚼筋の衰え:噛む力が弱くなり、硬い食べ物が食べにくくなります
- 口周りの筋肉の衰え:唇や頬の筋力が低下し、食べこぼしが増えることがあります
これらの変化は、単なる老化現象ではありません。『オーラルフレイル』は、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増えるなどのささいな口腔機能の低下から始まります。早めに気づいて対策を取ることが大切です。
口腔体操の効果とメリット
口腔体操を継続することで、以下のような効果が期待できます:
身体面の効果
- 誤嚥予防:口腔体操により、お口や頬などを動かすことで、だ液が分泌されます。また、飲み込み易くなりますので、誤嚥を防ぐことにもつながります
- 栄養摂取の改善:咀嚼機能の向上により、様々な食品を美味しく食べることができます
- 口腔内環境の改善:唾液分泌の促進により、口の中が潤い、細菌の繁殖を抑制します
精神面・社会面の効果
- コミュニケーション力向上:発音が明瞭になることで、人との会話が楽しくなります
- 自信の回復:食事や会話に対する不安が減り、積極的な生活を送れるようになります
- 表情の改善:お顔の表情もイキイキしてきます
基本の口腔体操5選【初心者向け】

それでは、実際に口腔体操を始めてみましょう。まずは基本の5つの体操から始めることをお勧めします。これらの体操は、どれも座ったままでできる簡単なものです。
舌の体操
舌は、食べ物を飲み込む際に最も重要な役割を果たします。舌の筋力を鍛えることで、飲み込む力を向上させることができます。
基本の舌運動
- 舌だし体操
- 舌を前にまっすぐ伸ばして5秒間キープ
- 舌を左右に動かして、それぞれ5秒間キープ
- 舌で上唇、下唇を順番になめる
- 舌の筋力トレーニング
- 舌で頬の内側を押すように力を入れる(左右各5秒)
- 舌を上あごに強く押し付けて5秒間キープ
- 舌で下あごを押すように力を入れて5秒間キープ
実施のポイント
- 痛みを感じない程度の力で行いましょう
- 鏡を見ながら行うと、正しい動きができているか確認できます
- 1日に2〜3回、各運動を5回ずつ行いましょう
頬の体操
頬の筋肉を鍛えることで、食べ物を口の中でまとめる力が向上し、食べこぼしを防ぐことができます。
基本の頬運動
- 頬ふくらまし体操
- 両頬に空気を入れて、風船のようにふくらませる
- 5秒間キープした後、ゆっくりと空気を抜く
- 左右の頬を交互にふくらませる
- 頬すぼめ体操
- 口をすぼめて、頬を内側に吸い込む
- 5秒間キープした後、ゆっくりと戻す
- 魚の口のような形をイメージして行う
実施のポイント
- 最初は小さな動きから始めて、徐々に大きな動きにしていきましょう
- 無理をせず、疲れたら休憩を取りましょう
- 1日に2〜3回、各運動を5〜10回行いましょう
唇の体操
唇の筋肉を鍛えることで、食べ物や飲み物をこぼしにくくなり、発音も明瞭になります。
基本の唇運動
- 唇すぼめ体操
- 唇を「う」の形にすぼめて5秒間キープ
- 唇を「い」の形に横に引いて5秒間キープ
- 「う」と「い」を交互に繰り返す
- 唇の筋力トレーニング
- 唇を強く閉じて5秒間キープ
- 唇を軽く開いて「パ」と音を出す
- 連続して「パパパパ」と10回発音する
実施のポイント
- 動きを意識的に大きくすることで、より効果的になります
- 声に出すことで、発音練習にもなります
- 1日に2〜3回、各運動を5〜10回行いましょう
顎の体操
顎の筋肉を鍛えることで、咀嚼力が向上し、食べ物をしっかりと噛むことができるようになります。
基本の顎運動
- 顎開閉体操
- 口を大きく開けて5秒間キープ
- ゆっくりと口を閉じる
- 口を左右に動かして、それぞれ5秒間キープ
- 顎の筋力トレーニング
- 歯を軽く噛み合わせて5秒間キープ
- 顎を前に突き出して5秒間キープ
- 顎を左右に動かして、それぞれ5秒間キープ
実施のポイント
- 顎関節に問題がある方は、無理をせず医師に相談してください
- 痛みを感じたら、すぐに中止してください
- 1日に2〜3回、各運動を5回ずつ行いましょう
発声練習
発声練習は、口腔機能全体を使う総合的な運動です。舌、唇、顎のすべての筋肉を協調して動かすことで、総合的な口腔機能の向上が期待できます。
基本の発声練習
- パタカラ体操
- 「パ」「タ」「カ」「ラ」をそれぞれ5回ずつ発声
- 「パタカラ」を連続して5回発声
- 徐々にスピードを上げて行う
- 母音練習
- 「あ」「い」「う」「え」「お」をそれぞれ5回ずつ発声
- 口の動きを大きくして、はっきりと発音する
- 「あいうえお」を連続して5回発声
実施のポイント
- パタカラ体操や早口言葉などを実施しており効果があります
- 声の大きさは、普通の会話程度で構いません
- 正しい発音を心がけることが大切です
- 1日に2〜3回、各練習を5〜10回行いましょう
症状別・目的別の口腔体操

基本の口腔体操に慣れてきたら、ご自身の症状や目的に合わせて、より効果的な体操を取り入れてみましょう。
飲み込みにくさの改善
「食べ物が飲み込みにくい」「むせることが多い」という方におすすめの体操です。
嚥下機能向上体操
- 首のストレッチ
- 首を左右にゆっくりと回す(各5回)
- 首を前後に傾ける(各5回)
- 肩を上げ下げする(5回)
- 舌骨上筋群の運動
- 顎を引いて、のどぼとけを上に上げる感覚で「ゴックン」とする
- 5秒間キープした後、ゆっくりと元に戻す
- この動作を5回繰り返す
実施のポイント
- 口腔体操を実施する一番よいタイミングは、食事の「前」です
- 首の運動は、首はとても繊細な部位となりますので十分注意し、ゆっくりと運動を行いましょう
- 症状がひどい場合は、医師や言語聴覚士に相談することをお勧めします
発音をはっきりさせる
「滑舌が悪い」「相手に聞き返されることが多い」という方におすすめの体操です。
構音機能向上体操
- 舌の巧緻性向上
- 舌先で上の前歯の裏を「タタタ」と連続して叩く(10回)
- 舌先で上あごを「カカカ」と連続して叩く(10回)
- 舌を丸めて「ラララ」と発音する(10回)
- 早口言葉練習
- 「赤巻紙青巻紙黄巻紙」をゆっくりと3回発音
- 「生麦生米生卵」をゆっくりと3回発音
- 慣れてきたら、徐々にスピードを上げる
実施のポイント
- 正確性を重視し、スピードは二の次と考えましょう
- 鏡を見ながら、口の動きを確認しながら行いましょう
- 1日に2〜3回、継続して行うことが大切です
ドライマウス対策
「口の中が乾燥する」「粘つきが気になる」という方におすすめの体操です。
唾液分泌促進体操
- 唾液腺マッサージ
- 耳の前(耳下腺)を円を描くようにマッサージ(10回)
- 顎の下(顎下腺)を親指で上に押し上げる(5回)
- 舌の下(舌下腺)を両親指で優しく押す(5回)
- 咀嚼筋運動
- 歯を噛み合わせずに、咀嚼するような動きを30回行う
- 口を「もぐもぐ」と動かして、唾液の分泌を促す
- ガムを噛むような動きを30回行う
実施のポイント
- マッサージは優しく行い、痛みを感じない程度に留めましょう
- 水分補給も忘れずに行いましょう
- 症状がひどい場合は、医師に相談することをお勧めします
効果的な実践方法とコツ

口腔体操を効果的に継続するために、実践方法とコツをご紹介します。
1日の実践スケジュール
朝(起床後)
- 基本の口腔体操を全種類実施(10〜15分)
- 唾液分泌促進体操を追加(朝は口の中が乾燥しがち)
昼(食事前)
- 嚥下機能向上体操を重点的に実施(5〜10分)
- 発声練習を追加
夜(就寝前)
- 基本の口腔体操を軽めに実施(5〜10分)
- 唾液腺マッサージでリラックス
継続するための工夫
環境づくり
- 鏡の前で行い、正しい動きを確認しましょう
- 静かな場所で集中して行いましょう
- 家族と一緒に行うと、継続しやすくなります
記録をつける
- カレンダーに実施した日にチェックを入れましょう
- 体調の変化や効果を日記に記録しましょう
- 小さな変化でも記録することで、モチベーションが維持できます
段階的な向上
- 最初は基本の体操から始めましょう
- 慣れてきたら、回数や時間を徐々に増やしましょう
- 無理をせず、自分のペースで続けることが大切です
注意点と安全対策
実施時の注意点
- 痛みを感じたら、すぐに中止してください
- 体調が悪い時は、無理をせず休憩しましょう
- 首や顎に既往症がある方は、事前に医師に相談してください
安全対策
- 座って行う場合は、安定した椅子を使用しましょう
- 立って行う場合は、転倒防止のため、手すりのそばで行いましょう
- 水分補給を忘れずに行いましょう
医療機関との連携 以下の症状がある場合は、口腔体操と併せて医療機関での相談をお勧めします:
- 強い痛みや違和感が続く場合
- 飲み込みの困難が改善しない場合
- 発音の問題が日常生活に大きく影響している場合
よくある質問と専門家のアドバイス

Q1:口腔体操はどのくらいの期間続ければ効果が現れますか? A1:個人差がありますが、多くの方が2〜4週間程度で何らかの変化を感じ始めます。継続することで、より大きな効果が期待できます。
Q2:痛みを感じた場合はどうすればよいですか? A2:痛みを感じたら、すぐに中止してください。数日休んでも痛みが続く場合は、医師や歯科医師に相談することをお勧めします。
Q3:入れ歯を使っている場合も口腔体操はできますか? A3:はい、可能です。ただし、入れ歯が合わない状態では効果的な体操が難しい場合があります。歯科医師に相談の上、適切な入れ歯の調整を受けることをお勧めします。
Q4:家族に協力してもらう場合の注意点はありますか? A4:家族の方は、無理強いをせず、温かく見守ることが大切です。また、変化を一緒に喜び、継続を支援することで、より良い結果が期待できます。
Q5:口腔体操以外にも気をつけることはありますか? A5:オーラルフレイル対策としては、「はみがき習慣」「定期的な歯科健診」「歯の健康を保つ食習慣」「お口の体操」が上げられます。総合的なケアが重要です。
まとめ

口腔体操は、高齢者の方々にとって非常に有効な健康維持法です。毎日の継続により、飲み込む力の向上、発音の改善、そして生活の質の向上が期待できます。
重要なのは、無理をせず、自分のペースで続けることです。小さな変化でも見逃さず、継続することで大きな効果を実感できることでしょう。
ただし、口腔体操はあくまでも予防や改善のための一つの手段です。気になる症状がある場合は、医師や歯科医師、言語聴覚士などの専門家に相談することをお勧めします。
健康な口腔機能を維持して、いつまでも美味しく食事を楽しみ、明瞭な発音で家族や友人との会話を楽しんでください。あなたの健康で豊かな生活を心から応援しています。
参考文献
- 日本歯科医師会「オーラルフレイル対策のための口腔体操」
- 科学的介護ソフト「Rehab Cloud」誤嚥性肺炎の予防法
- 日本老年歯科医学会「オーラルフレイルを知っていますか?」
※この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断や治療の代替となるものではありません。具体的な症状や不安がある場合は、医師や歯科医師などの専門家にご相談ください。
