高齢社会が進む中、私たちの身近にいるご高齢の方々の安全について、真剣に考えたことはありますか?ニュースで見る高齢者の事故は決して他人事ではありません。実際のデータを見ると、その深刻さがより明確になってきます。
今回は、高齢者事故の根本的な原因を詳しく解説し、家族として、社会として何ができるのかを一緒に考えていきましょう。

高齢者事故の現状:数字で見る深刻な実態
交通事故における高齢者の割合が増加中
2024年の交通事故死者数は前年比15人減の2663人で、統計が残る1948年以来、2番目に少なかったものの、その中で高齢者が占める割合は年々増加しています。
特に注目すべきは、75歳以上の運転者による死亡事故件数は、近年、平成30年頃まで横ばいで推移していますが、死亡事故件数全体が減少傾向にあるため、その占める割合は増加しているという現実です。
また、2024年の免許人口10万人あたりの死亡事故数は、75歳以上で5.2、75歳未満で2.6となっており、75歳以上が約2倍となっていることからも、高齢者の事故リスクの高さが分かります。
参考文献:
転倒事故も深刻な問題
交通事故だけでなく、家庭内での転倒事故も深刻です。厚生労働省令和4年国民生活基礎調査を参考にすると、高齢者が介護を必要になってしまう原因は、骨折・転倒が13.9%を占めており3番目に多くなっているのです。
さらに、65歳以上の方が要介護になる原因は「脳血管疾患(脳卒中)」が17.2%と最多で、「認知症」16.4%、「高齢による衰弱」13.9%と続き、4位の「骨折・転倒」は全体の12.2%となっています。
参考文献:

高齢者事故の根本的な原因を徹底解析
身体機能の変化が引き起こす事故要因
高齢者の事故の根本原因は、加齢に伴う身体機能の変化にあります。具体的には以下のような変化が起こります:
- 視覚機能の低下
- 視力の低下により、障害物や段差が見えにくくなる
- 夜間や薄暗い場所での視認性が著しく低下
- 動体視力の衰えにより、動いているものを正確に把握できない
- 聴覚機能の低下
- 車のエンジン音や警告音が聞こえにくくなる
- 周囲の音による危険察知能力の低下
- 筋力・バランス感覚の低下
加齢により皮膚を形成する表皮、真皮、皮下組織の菲薄化(薄くなる)。そして、皮下脂肪の減少により、転倒時に骨を守るクッション機能が働かなくなり、骨折しやすくなるという状態になります。
参考文献:
認知機能の変化による判断ミス
高齢者の事故では、認知機能の変化も大きな要因となります:
- 反応時間の遅延
- 危険を察知してから行動するまでの時間が長くなる
- 急な状況変化への対応が困難になる
- 注意力の分散
- 複数のことを同時に注意深く行うことが困難
- 一つのことに集中すると、他のことへの注意がおろそかになる
- 記憶力の低下
- 安全に関する重要な情報を忘れやすくなる
- 過去の経験を適切に活用できない場合がある
環境的要因も見逃せない
高齢者の事故は、個人の身体的変化だけでなく、環境的要因も大きく影響します:
- 家庭環境の問題
2017年12月の東京消防庁の65歳以上の転倒者5,730人のデータを検討してみると、頭部の外傷が34.3%と最も多く、次いで、下肢24.6%、顔面17.9%、体幹13.8%であったことから、家庭内での転倒事故の深刻さが分かります。
- 段差や階段での転倒
- 浴室での滑落事故
- 照明不足による転倒
- 社会環境の変化
- 高齢者に優しくない道路設計
- 公共交通機関の利用しにくさ
- 情報技術の進歩についていけない
参考文献:

事故を防ぐための具体的な対策
家族ができる支援策
- 定期的な健康チェック
- 視力・聴力の定期検査
- 筋力やバランス能力の評価
- 認知機能の変化の観察
- 環境整備
高齢者にとって、転倒・転落は骨折や頭部外傷等の大けがにつながりやすく、それが原因で介護が必要な状態になることもあるため、以下の環境整備が重要です:
- 家の中の段差解消
- 手すりの設置
- 適切な照明の確保
- 滑り止めマットの設置
- コミュニケーションの充実
- 運転に関する率直な話し合い
- 事故のリスクについての情報共有
- 代替交通手段の検討
参考文献:
本人が取り組める予防策
- 身体機能の維持・向上
- 適度な運動習慣の継続
- バランス訓練の実施
- 筋力トレーニング
- 安全意識の向上
- 自分の身体機能の変化を正しく理解
- 無理をしない行動の選択
- 危険な状況を避ける判断力の維持
- 定期的な技能確認
- 運転技能の客観的評価
- 歩行能力の確認
- 日常生活動作の見直し
社会全体での取り組み
- 安全な環境づくり
- バリアフリーの推進
- 高齢者向けの交通システム整備
- 事故防止技術の導入
- 情報提供と啓発
- 事故予防に関する正しい知識の普及
- 支援制度の情報提供
- 地域での見守り体制の強化
- 制度の充実
- 高齢者の移動支援制度
- 介護予防サービスの充実
- 事故防止技術の開発支援
参考文献:

まとめ:一人一人ができることから始めよう
高齢者の事故は、決して避けられない運命ではありません。その根本原因を理解し、適切な対策を講じることで、多くの事故を防ぐことができます。
重要なのは、転倒による不安や恐怖で何事にも意欲がわかず、気力がなくなり、活動性が低下し、活動性の低下が転倒リスクの増加を招くという悪循環を断ち切ることです。
家族として、社会として、私たち一人一人が高齢者の安全を守るために何ができるかを考え、実行に移していきましょう。小さな気づきや行動の積み重ねが、大きな事故を防ぐことにつながります。
今日から、あなたの身近な高齢者の方との会話の中で、安全について話し合ってみませんか?それが、事故のない安心できる社会づくりの第一歩となるはずです。
参考文献:

